- SWAG HOMMES SS25 ISSUE22
TIMELESS
ハイファッション ヴィジュアル マガジン SWAG HOMMES ISSUE22がローンチ。“TIMELESS”をテーマに, ファブリックと花を愛し, 手仕事と色彩を証明してきた唯一無二のファッションデザイナーであるドリス ヴァン ノッテンと, 先日他界したデイヴィッド・リンチ監督へのオマージュを込めて……表紙を飾るのは, フランスのファッション誌「Purple」のファウンダー/エディターにして, 写真家のオリヴィエ・ザームによってパリで撮影されたドリス ヴァン ノッテンのラストコレクション。アートディレクターは, 同じく「Purple」出身のクリストフ・ブルンケル。ハイクオリティ紙を採用したオールカラー228頁。全編にわたり, モードを牽引する最前線のデザイナーたちによる最新コレクションとともに, 多彩な物語(ファッションストーリー)を紡ぐ。
“時間(とき)の流れを超えて……”
時間(とき)って, いったい何なのだろうか。過去, 現在(いま), そして未来……。私たちはいったい, どこをさまよっているのだろうか。
デジタルの世界へ飛び込めば, 若い世代によってアップロードされた70~80年代のシティポップや昭和歌謡, 90年代のヒップホップ, その時代のファッション雑誌, 映画, TV番組の切り抜きがあふれるように流れてくる。
街を見わたせば, 若い世代がヴィンテージや古着に身を包み, カクカクしたセダンやステーションワゴンといった旧車を転がし, 老舗の純喫茶やレコードバー, スナック, もしくは熱海や伊香保など, 廃れかけていた温泉街をのぞけば, 高齢の常連に混じってにぎわいをみせている。
あるいは, どこにでもあるような田園風景が広がる田舎で, 若い世代が畑を耕している光景もめずらしくなくなった。
サブスプリクション, ファストファッション, シェアリングエコノミー, AIテクノロジー……新たなサービスが次々と生まれつづけ, いつでも, どこでも, 何でもインスタントに手に入るような便利なこの時代の反動なのか, それとも, 未来を描きづらいこの不確実で混沌とした時代だからなのか, 若者たちの間には, 夢や希望に満ちあふれていた時代=ユートピア(楽園)への情景やノスタルジアが広がるっているのかもしれない。
音楽, 映画, 美術, 工芸, 建築, 道具, 衣服, 乗りもの……そして食べものにしても, 私たちの暮らしをとりまくものは, いつからなのか, つくり手の感覚や個性, こだわりや美学, 愛情や情熱を奪われ, マーケティングやターゲティングが優先され, コスト・タイムパフォーマンスが重視されるようになってしまっている。だけれども, 世代を超えて, 時代を超えて, 人々の心を躍らせるような“手”をかけてつくられたものが, たとえ色褪せても, 古くなっても, 壊されずに捨てられるどころか, 大切にされ, 愛されつづけていることを, 物語っているようにも感じてならない。
そんなさなか, 昨夏, パリで観たドリス ヴァン ノッテンのエモーショナルなラストショー。ライトアップされた一筋の銀色の道を, 熱狂の渦のなか, 宙へとひらひらと舞い散る銀箔を浴びながら, 38年間の歴史とともに現代のエレガンスを追求した最後のコレクションを纏い, 闊歩する歴代のモデルたちと新星のモデルたち……。あの余韻が, 今もなお鮮明に私の記憶に残っている。過去, 現在(いま), そして未来……時間(とき)の流れを超えるようなあの感覚……。
ドリス ヴァン ノッテンと, 先日他界したデイヴィッド・リンチ監督へのオマージュを込めて……仏誌「Purple」のファウンダー/エディターにして写真家でもあるオリヴィエ・ザームによってパリで撮影された本誌の表紙とともに, ファブリックと花を愛し, 手仕事と色彩を証明してきた唯一無二のファッションデザイナーによる「始まりも、終わりもない」と題したレターの最終章を, ここに刻ませていただきたい。
「これは私の129回目のショーであり, これまでのショーと同じく未来を見据えています。今夜はいろいろなことがありますが, グランドフィナーレではありません。私は, かつてマルチェロ・マストロヤンニ(イタリアの映画俳優)が, (マルセル・)プルースト(フランスの小説家。代表作の「失われた時を求めて」で, 主人公が紅茶に浸したマドレーヌの香りに触れた瞬間, 過去の記憶や感情がまざまざとよみがえる感覚を描写し, その現象はプルースト効果と名づけられている)が想像した失われた楽園のその先にある, 逆説的な“未来へのノスタルジー”について語ったこと, そしていつか愛情をもって振り返ることができると知っていながら, 私たちが夢を追い求めつづけることについて考えます。私は自分の仕事を愛し, ファッションショーをすることを愛し, ファッションを人々と分かち合うことを愛している。クリエイションとは, 生きつづける何かを残すことです。この瞬間の私の感覚は私だけのものではなく, いつも, いつまでも, 私たちのものなのです」
SWAG HOMMES 編集長 奥澤 健太郎
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