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- アイルトン・セナ 確信犯
イタリア(ヨーロッパ)におけるF1報道において名うてのジャーナリストでありながら、英語での著述がないこともあってか、日本ではあまり知られていない著者レオ・トゥッリーニ氏。したがって、これまで彼の書いたものが我々日本人の目に触れることはほとんどなかった。
そんな氏は公私ともに「フェラーリ側」にありながら、アイルトン・セナの人間性に惹かれ、同い年ということも手伝って、親交を深めてゆく。
本書はセナの没後20年となる2014年に本国で発表された作品で、両者の間に育まれた「友情」を縦軸とし、セナにとってキーとなる場所、事象、人物ごとにユニークな切り口でまとめ上げた秀作である。
過去数多世に出た「セナを礼賛する回顧録」や「関係者の証言を交えた“イモラの悲劇”の叙述」などとは一線を画する本書は、全7章を通して筆者の深い洞察力に裏打ちされた描写が随所に光る。とりわけ第1章「帰郷」と第4章「永遠の鈴鹿」で語られる真実には、熱烈なセナ支持者でなくとも思わず引き込まれるだろう。
●“高度1万メートルでの通夜”が営まれる機内に流れる、切ないまでに静謐な時
第1章「帰郷」で描かれるのは、セナの遺体が移送される機内の様子。
セナの葬儀に参列するため筆者がパリでヴァリグ・ブラジル機に乗り込むと、それが偶然にも彼を故郷に送り届けるフライトであることが判明する。
さらに奇しき巡り合わせにより、筆者の席はビジネスクラスに特別にしつらえた祭壇に置かれた柩の前だった──。
偶然と呼ぶにはあまりに劇的なこのエピソードがここまで詳細に語られるのは、これまでなかったはずだ。
●「タイトルのためなら躊躇はしない。正義と復讐とは相等しいものさ」
1990年日本GPでのプロスト撃墜が故意であったことは、その1年後にセナ自身が認めているが、第4章「永遠の鈴鹿」では、筆者がいわば「犯行予告」を実行の1カ月以上も前に聞かされていたことが分かる。
あれはレース中に憤激が暴走した結果(衝動的に故意)などではなく、完全に「確信犯」だったのである。
セナが宿敵への義憤を吐露し、あの復讐劇が「正義に適った行為」であり「勝つためにやらなければならない」と滔々と自説を展開するシーンは本書のハイライトと言えよう。
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